萬屋直人


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旅に出よう、滅び行く世界の果てまで。☆7










旅に出よう、滅び行く世界の果てまで。

〔あらすじ〕

世界は穏やかに滅びつつあった。
「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。
人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失していく…。
そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。
乗っているのは少年と少女。
他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出た。
目指すのは、世界の果て。
辿り着くのかわからない。
でも旅をやめようとは思わない。
いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。
記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語。

★★★☆ 7点

〔受賞・シリーズ等〕
  
〔感想〕

単巻ライトノベルの名作を探していると必ずぶち当たる作品。
そんなに良いのかと期待しまくって読んでしまったので、その期待以上とはいかなかったものの、それでも良い作品であったのは確か。
というより、あらすじを見て感動系を期待したのだが、実際には(要所要所でじーんと来ながらも)基本的には日常系だったので、そもそも期待のベクトルが間違っていたということか。

全体的に淡々とほのぼのした雰囲気で話が進み、大きな見せ場はないが、気がつくとこの世界に入り込んでしまっていた。
各話でキャラが魅力的に描かれていて、メインの登場人物全員に愛着が湧き、別れの場面ではしんみりした気分になれる。
また話の流れ自体も(第一話は野菜食べるだけの話だからあれとして、)魅力的で、それぞれの話が(ほのぼの、熱い男のロマン、成長物語と、)違った雰囲気を持っているのも巧い。
個人的には第二話が(ドラム缶風呂含め)特に気に入った。

また、(ネタバレ→)固有名詞を書かなければ永久に残るという発想には感心。
てっきり(ネタバレ→)固有名詞を出さないのは雰囲気のためだと思っていたからちょっと驚いてしまった。

そんなこんなで、割と地味ながら不思議と愛着の持てる作品。
あ、スイカ割りのエピソードが割愛されていたのはちょっと不満かな。







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